世界にはおよそ3,000種類のエビがいる
エビは海だけでなく淡水にも生息し、それらすべてを合わせるとおよそ3,000種にものぼります。そのうちの180種ほどが世界で食用とされており、さらにその中でも20~30種ほどが日本国内で食用とされています。ただし、まとまって水揚げされるエビの種類はさらに少なく、実際には今回紹介する19種ほどがメジャーです。
エビを表す漢字「海老」「蝦」「蛯」には使い分けが!
「エビ」を漢字で書くとき、「海老」「蝦」「蛯」といろいろな表記がありますが、実は使い分けが存在します。
「海老」は海底を歩く種類のエビを指す
「海老」と表記する場合は、主に海底を歩く大型のエビのことを指します。例えばイセエビ・ウチワエビ・セミエビなどを漢字表記すると、それぞれ伊勢海老・団扇海老・蝉海老であり、これらの種は基本的に泳ぐことなく岩礁やサンゴ礁の上を歩きます。これらのエビに共通する見た目の特徴は、大型でゴツゴツした硬い殻に覆われている点です。
また「海老」という漢字があてられたのは、多くのエビに共通している、腰の曲がった長いヒゲを生やした姿を老人に見立てたことが由来となります。長寿の象徴とされ、縁起物として扱われるのも同じ理由ですね。
「蝦」は海中を泳ぐ種類のエビを指す
「蝦」と表記する場合は、海底を歩くエビ(海老)に対して、主に海中を泳ぐエビのことを指します。例えばクルマエビ・ボタンエビを漢字で書くと、それぞれ車蝦・牡丹蝦です。単に小型のエビを「蝦」と書くという説もありますね。
もともと「蝦」という字は、虫偏ではなく魚偏でしたが、後にエビは魚でないため虫偏をあてられたそうです。ちなみに「叚」という漢字の意味のひとつには、「体を曲げる」があります。
「蛯」は「海老」と使い方は同じ
近年ではあまり使われませんが、「蛯」という漢字を使ってエビと読む場合があります。「蛯」は「海老」と同じく、海底を歩く大型のエビを指します。語源は定かではありませんが、日本生まれの漢字で、「海老」と「蝦」の漢字の一部を組み合わせたという説が有力です。
日本で食べられる代表的な食用エビ19選
バナメイエビ
もっともポピュラーな食用エビ
バナメイエビはクルマエビ科の一種で、生の状態でもほんのり赤っぽい点が、ブラックタイガーとの違いのひとつです。淡水に近い水質でも育つため、世界中で養殖されています。
食べると柔らかくもわずかに弾力があり、しっかりした甘味を感じます。焼いたり揚げたりはもちろん、塩茹でしてサラダに混ぜるのもおすすめの食べ方です。冷凍のむきエビの正体は、バナメイエビであることも多いです。
・別名/シロアシエビ
・クルマエビ科
・生息地/東太平洋(日本では大半が養殖の輸入品)
・おすすめ料理/フライ・天ぷら・エビチリ・ガーリックシュリンプ・サラダなど
ブラックタイガー(ウシエビ)
プリッと食感がたまらない万能なエビ
正式名称はウシエビですが、ブラックタイガーという別名で親しまれているクルマエビ科のエビです。大ぶりで弾力があり、加熱してもプリッとした食感が残ります。
見た目はバナメイエビより大きいだけでなく、全体的に灰色っぽく黒い縞模様が特徴です。またバナメイエビより一度に養殖できる量が少ないので、価格は少し高めになっています。
ちなみにシータイガーと呼ばれる大型のエビが、魚屋さんに並んでいるのを見たことありませんか。実はシータイガーとは、天然のブラックタイガーのことで、大きいものでは30センチを超えるクルマエビ科最大のエビなのです。
・正式名/ウシエビ
・別名/クマエビ
・分類/クルマエビ科
・生息地/インド太平洋の熱帯、亜熱帯地域
・おすすめ料理/フライ、天ぷら、エビチリ、ガーリックシュリンプ、サラダなど
赤エビ
生食可能な海外産のエビ
お寿司屋さんで見かける赤エビとは、アルゼンチンアカエビのことです。赤い色素成分がブラックタイガーの2倍ほど含まれていることで、茹でる前から鮮やかな赤色をしています。
遠く離れたアルゼンチンで捕獲されても、すぐに急速冷凍されて日本にやってくるため、多くの場合生食できるのも嬉しいポイント。さらにバナメイエビやブラックタイガーよりも安価で購入できることも人気の理由のひとつです。
・正式名/アルゼンチンアカエビ
・分類/クダヒゲエビ科
・生息地/南米アルゼンチン南部の深海
・おすすめ料理/刺身、フライ、天ぷら、エビチリ、塩焼きなど
クルマエビ
旨味が強くイセエビと並ぶ高級なエビ
クルマエビは、その味の良さから伊勢エビに次ぐ高級エビとして広く親しまれています。身体を丸めたときの縞模様が車輪のように見えることから車エビと呼ばれ、虹色に光るしっぽや透明感のある姿が美しいです。
ブリのように出世魚ならぬ出世エビで、小さい順に「サイマキ(5~6センチ)」「マキ(6~10センチ)」「クルマエビ(10センチ以上)」と呼び方が変わります。どんな食べ方でも美味しいですが、加熱することで旨味がさらに増えるため、刺身で食べる際も軽く湯通ししたものを提供されることが多いです。
・別名/ホウサイエビ、マダラエビ、サイマキ、マキ
・分類/クルマエビ科
・生息地/インド太平洋沿岸
・おすすめ料理/刺身、フライ、天ぷら、塩焼きなど
ボタンエビ(トヤマエビ)
甘味が強くねっとり食感が大人気
体色が牡丹の花のように赤いことから、ボタンエビと呼ばれています。しかし日本で流通するボタンエビは、多くの場合近縁種のトヤマエビのことであり、正確にはボタンエビと呼べないことが多いです。トヤマエビは北海道周辺や日本海側で捕獲され、本当のボタンエビは太平洋側にいます。
最大で20センチを超えることもある大型のエビで、刺身で食べたときのねっとり濃厚で甘い食感がたまらなく美味しいです。刺身以外にも殻やミソから良い出汁が出るため汁物にも適していて、さらに焼いて食べても美味しい万能エビです。ただし非常に高価であることから、あまり家庭で食べられることはありません。
・別名/ホンボタンエビ
・分類/タラバエビ科
・生息地/太平洋側日本固有種
・おすすめ料理/刺身、味噌汁(頭・殻)、卵の醤油漬け
シラエビ
上品な甘味が特徴の富山名物
シラエビはオキアミ科に属するエビの一種で、日本沿岸の深海にのみ生息する固有種です。さらに安定した漁獲量を確保できるのは、日本では富山湾だけであり、白エビの透明感ある美しい見た目から「富山湾の宝石」とも呼ばれています。
シラエビは鮮度が落ちるのが早いため、以前は富山周辺でしか知られていませんでしたが、最近では冷凍技術の発達により全国的に流通されるようになりました。少々殻をむくのは大変ですが刺身で食べても美味しいですし、やはり殻ごとから揚げにして食べるのがおすすめです。
・別名/シロエビ、ヒラエビ、ベッコウエビ
・分類/オキエビ科
・生息地/日本沿岸の深海にのみ生息
・おすすめ料理/刺身、かき揚げ、から揚げ、出汁(頭・殻)など
甘エビ(ホッコクアカエビ)
ねっとり甘い身は刺身で大人気
甘エビの正式名称はホッコクアカエビですが、生食したときのねっとり甘い味わいであることから、甘エビと呼ばれることが一般的です。ちなみにこの甘さは、死後多少時間が経つことでピークに達し、新鮮過ぎたり逆に時間が経ち過ぎたりするものは物足りない味になります。
基本的には生食がおすすめですが、殻ごとから揚げにするのもおすすめの食べ方です。殻やミソからはいい出汁が取れるので、刺身で食べたあとの殻も再利用しましょう。また冬には甘エビは青い卵を抱えますが、珍味ですので捨てないように。
・正式名/ホッコクアカエビ
・別名/甘エビ、南蛮エビなど
・分類/タラバエビ科
・生息地/カナダ西岸、アラスカなど北太平洋、日本では福井、北海道など
・おすすめ料理/刺身、から揚げ、味噌汁(頭・殻)、卵の醤油漬けなど
シバエビ
揚げ物にすると抜群に美味しいエビ
シバエビはかつては全国的に捕獲されていた歴史あるエビですが、最近では瀬戸内や有明海などが主な漁業場になっています。旬である冬になれば、スーパーの魚屋さんでも見かけることがあるでしょう。
殻は柔らかく、加熱してもあまり赤くならないのが特徴です。身は若干水っぽいので、から揚げや天ぷらなど加熱することで一層美味しく食べられます。
・別名/シラエビ、マエビなど
・分類/クルマエビ科
・生息地/東アジア沿岸域、日本では東京湾以南の大きな内湾
・おすすめ料理/天ぷら、から揚げ、ガーリックシュリンプなど
桜エビ
栄養満点で風味豊かなエビ
桜エビは体長4センチほどの小さなエビで、日本では駿河湾で唯一水揚げされます。海で泳いでいる間は透明ですが、水揚げされるとピンク色になることから「桜エビ」と呼ばれるようになりました。
小さい見た目の桜エビですが、アスタキサンチンやDHAといった栄養成分が豊富で、味も良いことからさまざまな料理に使われます。かき揚げや和え物、お好み焼きに混ぜたりと、使いどころは沢山です。
・別名/ヒカリエビ
・分類/サクラエビ科
・生息地/台湾周辺深海、日本では駿河湾近など
・おすすめ料理/かき揚げ、和え物、炒め物など
サルエビ
あらゆる調理法で食べられ、釣り餌にも利用される価値あるエビ
サルエビは体長10センチほどの小型のエビで、全国あらゆる内湾で見ることができます。食用だけでなく釣り餌としても利用されるため、実は重宝されるエビなのです。
揚げ物や塩茹でなど、どんな食べ方でも美味しく食べられます。またサルエビは、えびせんに使われることも多いエビです。
・別名/ブトエビ、アカエビ、クマエビ、モサエビなど
・分類/クルマエビ科
・生息地/インド太平洋の熱帯、温帯地域。日本では九州、四国など
・おすすめ料理/天ぷら、から揚げ、塩茹でなど
ホッカイエビ
北海道で獲れる希少なエビ
ホッカイエビは甘エビと同じタラバエビ科の小型種で、日本では北海道の東部が主な漁場である希少なエビです。多くの場合、茹で上がって真っ赤になったものが全国各地に流通しますが、水揚げされたばかりの北海シマエビは暗い緑で褐色の縦じまが目立っています。
生で食べると味は薄いですが加熱することで旨味が増します。殻付きのまま天ぷらやから揚げにしたり、塩茹ですると身が引き締まって非常に美味しいです。
・別名/ホッカイシマエビ
・分類/タラバエビ科
・生息地/日本海北部、オホーツク海など
・おすすめ料理/天ぷら、から揚げ、塩茹でなど
イセエビ
誰もが認める美味しく縁起物の高級エビ
イセエビは日本近海の海底に生息し、最大で40センチほどにもなる大型のエビです。長いヒゲと腰が曲がった姿から長寿を連想させ、縁起ものとしても扱われます。
食べるのに適した大きさになるまで3~4年ほどかかり、養殖も難しいことがイセエビが高級品たる所以。旨味成分をたっぷり含んだイセエビの身は、濃厚でありながら上品な甘さがあり、刺身や姿焼きなど、どんな料理にも絶品です。
・別名/鎌倉エビ
・分類/イセエビ科
・生息地/韓国、台湾、茨城以南の太平洋側
・おすすめ料理/刺身、姿焼き、味噌汁(頭・殻)など
ウチワエビ
ユニークな見た目とは裏腹にイセエビにも匹敵する逸材
名前の通り団扇のような独特のフォルムをもつウチワエビは、西日本でしか獲ることができない高級エビです。平らな見た目ですが、身はたっぷり詰まっており、時には伊勢エビよりも味が上だという意見もあります。
実際に身は伊勢エビにそっくりで、甘くねっとりした食感がたまりません。刺身や姿焼きだけでなく、味噌汁に入れるととても良い出汁が取れます。
・別名/シラミエビ、バタバタ、パッチンエビなど
・分類/セミエビ科
・生息地/インド太平洋の熱帯、亜熱帯。日本では九州、沖縄など
・おすすめ料理/刺身、姿焼き、味噌汁(頭・殻)など
セミエビ
イセエビを凌駕する超高級エビ
日本では主に外洋に面した温かい海域に生息する大型のエビで、長い触覚をもたない特徴的なフォルムをしたエビです。殻が非常に硬いですが、その中にはたっぷりのプリプリした身が詰まっています。
身は甘く濃厚で、イセエビよりも高値で取引されるほどです。イセエビやウチワエビと同様、刺身や姿焼き、味噌汁に入れるなどして食べましょう。
・別名/モンパ、クツエビ、カブトエビなど
・分類/セミエビ科
・生息地/インド太平洋の熱帯、亜熱帯。日本では九州、沖縄など
・おすすめ料理/刺身、姿焼き、味噌汁(頭・殻)など
ゾウリエビ
とっても可愛い見た目でありながら美味で高級
ゾウリエビはセミエビ科なので、セミエビと見た目はそっくりですが、大きさは15センチ程度と小さいです。また日本にはゾウリエビのほかにミナミソウリエビも生息していますが、あまり区別されることなく扱われています。
非常に美味であることが知られていますが、市場に出回ることがほとんどありません。刺身や塩茹でなどが絶品です。
・別名/ワラジ、テゴサなど
・分類/セミエビ科
・生息地/台湾、日本では九州沖縄の浅い海
・おすすめ料理/刺身、姿焼き、味噌汁(頭・殻)など
天使のエビ(パラダイス・プロン)
日本でブームが訪れた極上のエビ
天使のエビの正式名は「パラダイス・プロン」であり、「天国に一番近い島」と呼ばれるニューカレドニアで養殖されるエビです。エビの中では唯一、フランスににおける最高品質の称号「QUALICERT(クオリサート)」を取得しています。
全長は16センチほどで、生の状態では青く、透き通った見た目が美しいです。旨味も非常に強いエビなので、刺身はもちろん、柔らかな殻ごとバリバリ食べられるソテーやから揚げにして食べてみましょう。
・分類/クルマエビ科
・生息地/フランスニューカレドニア
・おすすめ料理/刺身、から揚げ、ソテーなど
オマールエビ(ロブスター)
フレンチの定番高級食材
オマールエビのことを英語でロブスターと呼びます。イセエビ・ウチワエビ・セミエビなどはイセエビ属に属しますが、オマールエビはザリガニ属であり、実はその正体は海洋性ザリガニなのです。またオマールエビにはヨーロッパで獲れる小型のヨーロピアンオマールと、大西洋アメリカ大陸で獲れる大型のアメリカンオマールの2種が存在し、ヨーロピアンオマールの方が希少な上に味が良いと言われることも。
主にオマールエビはヨーロッパやアメリカで食されてきましたが、最近では徐々に日本でも馴染み深い食材になってきています。オマールエビはハサミの中に詰まった身がもっとも美味しいと言われているので、間違えて捨てないようにしましょう。蒸して食べるほか、殻からも出汁がたっぷり取れるので、オマールエビのビスクやブイヤベースを作ってみるのもおすすめです。
・別名/ロブスター(英名)
・分類/アカザエビ科
・生息地/ユーラシア大陸沿岸、大西洋アメリカ大陸沿岸など
・おすすめ料理/姿焼き、スープ(頭・殻)など
アカザエビ(スカンピ)
ヨーロッパでは超高級食材として重宝される(上画像はヨーロッパアカザエビ)
長いハサミを持つアカザエビは、濃厚でねっとり甘い身を持ち、イセエビに匹敵するほど高値で取引される高級なエビです。ヨーロッパ近海にはアカザエビの近縁種であるヨーロッパアカザエビが生息し、イタリア料理ではスカンピ、フランス料理ではラングスティーヌと呼ばれ、やはり高級食材として扱われています。
また日本国内において、テナガエビと表記されることもありますが、本記事においても後ほど紹介する川で獲れるテナガエビとは別種です。新鮮なものであれば刺身もおすすめで、塩焼きや塩茹でのほか、パスタやオーブン焼きといったイタリアン風の料理にもよくあいます。
・別名/スカンピ(イタリアン)、ラングスティーヌ(フレンチ)テナガエビなど
・分類/アカザエビ科
・生息地/房総半島から日向灘の深海
・おすすめ料理/刺身、塩焼き、塩茹で、イタリアンやフレンチなど
手長エビ
長い腕が特徴の川や池で獲れるエビ
体長よりも長く発達することがある腕を持つ姿が特徴的なテナガエビは、海ではなく、温暖な地域の淡水域や汽水域に生息しています。日本国内においては釣りの対象でもあり、梅雨ごろがテナガエビのシーズンです。
ちなみに腕が長く大きく発達するのはオスだけであり、大きなオスが釣れると嬉しくなりますね。殻が柔らかいエビなので、手っ取り早く素揚げにして食べるのがもっとも簡単で美味しい食べ方です。
・別名/ザザエビ、カワエビなど
・分類/テナガエビ科
・生息地/韓国、台湾、日本では九州、本州、四国の淡水域・汽水域
・おすすめ料理/素揚げ、佃煮など
おわりに
日頃馴染みのあるエビ以外にも、見たことがない種類もあったのではないでしょうか。日本は周囲を海に囲まれていることもあり、多くの種類を食用としていることが分かったと思います。
最近ではオマールエビ以外にも、天使のエビといった海外から輸入されてきたエビもメジャーになりつつあります。ネット通販を使えば、大抵の種類のエビを、鮮度のいい状態で家庭でも楽しむことができます。エビ好きの人は、ぜひこの記事を参考に、極上のエビライフをお楽しみください。
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