イカとはどういう生き物?
イカは貝の仲間
背骨がないイカは軟体動物に属しており、あまり知られていませんが実は貝の仲間です。イカを捌いたときに出てくる透明のペラペラしたものや、サーフボード型の甲は、貝殻の名残なのです。
イカの足の数は実は8本
多くの人は子どもの頃に「タコの足は8本、イカの足は10本」と習うと思いますが、正確にいうと少し誤りがあります。イカの足をよく観察してみると、10本のうちの2本だけが長いことに気が付くと思います。その長い2本の足のことを「触腕」といい、足ではなく獲物を捕まえるときに使用する「腕」なのです。
イカは目がいい
イカの目の構造は人間に近く、イカの種類にもよりますが視力は0.5~0.7あるといわれています。ものを立体的に視ることができるため、獲物との距離感を正確に測れます。
イカは頭から足が生えている
多くの人がイカの絵を描こうとするとき、三角形のヒレがついたほうを上で、足を下にして描くのではないでしょうか。しかし実際には、三角形のヒレがついたほうが内臓が詰まったイカの胴体(外套)なので、図鑑では足が上、胴体が下の写真で載っています(つまりイカは頭から足が生えているということ)。
イカには2つのタイプがある
イカは大きく分けて「ツツイカ目」「コウイカ目」の2つのタイプがあります。ツツイカ目は甲が薄く、ヒラヒラした透明の軟甲を持つタイプのイカで、アオリイカ、スルメイカ、ヤリイカなどが含まれます。一方でコウイカ目は分厚いサーフボード型の甲をもち、「コウイカ」「モンゴウイカ」「コブシメ」などが含まれます。
日本で食べられる美味しいイカ13選
アオリイカ
みんなが憧れる高級イカ
アオリイカは数あるイカのなかでもっとも美味とされ、「イカの王様」の異名を持ちます。高級食材のためスーパーではなかなか見かけることはなく、大半が飲食店で消費されます。ほかのイカに類をみない甘味と旨味を秘めた刺身はもちろん、天ぷらや一夜干しなど、あらゆる料理が絶品です。
ヒレが胴全体についているのが特徴で、アオリイカが優雅に泳ぐ姿は美しいです。そんなアオイリカには、実は「シロイカ」「アカイカ」「クワイカ」の3種類が存在しますが、多くの場合は一括りでアオリイカと呼ばれています。旬は地域ごとに違いますが一年を通して美味しく、とくに春から夏に大型のアオリイカが産卵のため沿岸部に集まるため、釣り人が目を輝かせる時期です。
・別名/ミズイカ、クツイカなど
・分類/ヤリイカ科
・産地/長崎、沖縄、和歌山など
・旬/一年中
・釣期/3~6月(大型)、8~11月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼き、一夜干しなど
スルメイカ
日本で定番の食用イカ
日本の食用とされるイカのなかで、もっとも漁獲量と消費量が多いのがスルメイカです。イカの干物である「するめ」の多くが、このスルメイカから作られています。
短い三角形のヒレが先端にあり、胴の長さに対しては少々小さく感じます。アオリイカやヤリイカのように眼球が薄い膜で覆われておらず、まるでハムスターのように黒々露出しているのも特徴のひとつです。一年を通して水揚げされるイカですが、おかっぱりでスルメイカを釣ろうとするなら5~7月が狙い目になります。
・別名/マイカ、バライカなど
・分類/アカイカ科
・産地/北海道、青森、石川など
・旬/6~8月
・釣期/6~8月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
ヤリイカ
アオリイカに並ぶ高級イカ
ヤリイカという名前は、胴が細長くヒレが槍のようにとがっていることが由来です。ケンサキイカと見た目はそっくりですが、触腕が短く細い点で見分けがつきます。
また「冬イカ」とも呼ばれるようにヤリイカの旬は冬で、とくにメスのヤリイカはこの時期卵をもつことから、「子持ちヤリイカ」としても人気があります。体が大きいオスのヤリイカは刺身や加熱料理で味わい、メスは子持ちのものを丸ごと煮つけにして食べたいですね。
・別名/ケンサキイカ、ミズイカ、フユイカなど
・分類/ヤリイカ科
・産地/北海道、宮城、長崎など
・旬/12~2月
・釣期/12~2月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
コウイカ
小さいけどイカスミがいっぱい
コウイカは名前の通り、分厚い舟型の甲を体の中にもつタイプのイカです。砂浜や磯によく落ちているサーフボード状の白いものこそ、コウイカの甲ですね。またコウイカは墨の量が多いことから関東では「スミイカ」と呼ばれ、イカ墨パスタにも利用されます。
コウイカは産卵のため春ごろに内湾に集まってくるため、釣るなら3~5月ごろです。コウイカを釣ったら墨袋を潰さないように丁寧に扱わないと、墨があふれて大変なことになりますよ。肉厚でねっとりした甘い身を、ぜひ刺身や天ぷらで味わってみてください。
・別名/スミイカ、ハリイカなど
・分類/コウイカ科
・産地/長崎、福岡、愛媛、鳥取など
・旬/3~6月
・釣期/3~6月、8~11月(小型)
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
カミナリイカ(モンゴウイカ)
ねっとり甘い肉厚の身が絶品
正式名はカミナリイカですが、モンゴウイカの名前で広く知れ渡っています。主に西日本で水揚げされるイカであり、コウイカの仲間のなかでは大型サイズです。モンゴウイカは唇にも似た楕円状の模様がある点で、コウイカと区別できます。
モンゴウイカの旬は3~5月。味はコウイカにも似て甘味が強いですが、とにかくコウイカとは比べ物にならないほど肉厚なので食べ応えがあります。加熱し過ぎると固くなる点には注意しましょう。
・別名/マイカ
・分類/コウイカ科
・産地/長崎、愛媛、千葉など
・旬/3~6月
・釣期/3~6月(大型)、8~11月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、フライ、煮つけ、バター焼きなど
ケンサキイカ
高級なヤリイカのそっくりさん
ケンサキイカは温かい海に生息し、主に日本海側で水揚げされる高級イカのひとつです。ヤリイカに姿が似ていますが、触腕が胴体に対して長い点で区別できます。また関西では「シロイカ」と呼ばれ、関東では「アカイカ」と呼ばれる点が紛らわしいです(アオリイカもシロイカと呼ばれる)。
また冬が旬のヤリイカに対し、ケンサキイカの旬は地域ごとに差異はあれど大体が夏ごろとされます。適度に噛み応えがありますが、ねっとり口に残る甘味と旨味は、ほかのどのイカにも負けません。加熱しても身が固くなりにくいため、刺身だけでなく天ぷらやバター炒めでも絶品です。
・別名/ヤリイカ、マイカ、アカイカ、マルイカなど
・分類/ヤリイカ科
・産地/長崎、佐賀、山口、島根など
・旬/6~8月
・釣期/3~9月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
アカイカ
加工原材料に利用される大型のイカ
アカイカはスルメイカと同じアカイカ科の仲間で、スルメイカよりも身が柔らかいのが特徴です。市場ではアカイカのことを「ムラサキイカ」「バカイカ」と呼び、大型で加熱しても固くなりにくいため主に加工原料として使われます。
そのため日本国内ではスルメイカに次いで多く水揚げされているイカですが、丸ごと生の状態で見かけることはほぼありません。しかし刺身で食べても柔らかく、十分旨味を感じることができます。茨城にはアカイカの釣り船が多くあるそうなので、丸ごと食べたい人はぜひ乗ってみるといいかもしれません。
・別名/ムラサキイカ、バカイカ
・分類/アカイカ科
・産地/北海道、青森、岩手など
・旬/不明
・釣期/8~11月
・おすすめ料理/刺身、煮つけ、フライ、バター焼き、一夜干しなど
ジンドウイカ(ヒイカ)
小さいけど旨味がいっぱい
ヒイカは食用イカのなかでも小型で、「小イカ」「ボウズイカ」とも呼ばれます。柔らかくしっとりした身には小さいながらも旨味がいっぱいで、ほかの種類の幼イカと比べて手頃な価格であることも嬉しいポイントです。
1年中安定した美味しさのイカですが、春の産卵にむけて接岸してくる冬に水揚げ量が増え、季節によっては全国各地の堤防でも釣りあげることもできます。ヒイカは小さいので刺身で食べるとき以外は、下処理せず丸ごと料理して味わってみましょう。
・別名/小イカ、アカイカなど
・分類/ヤリイカ科
・産地/宮城、兵庫、和歌山など
・旬/地域によって異なる
・釣期/11~翌2月(関東)、7~8月(九州)
・おすすめ料理/刺身、煮つけ、パスタなど
ソデイカ
世界を回遊する巨大イカ
ソデイカは食用イカのなかでは最大級の大きさを誇り、なんと胴の長さ1メートル、重さは20キロを超えることもあります。大きなヒレは胴全体に及び、真っ赤な体表が特徴的です。その見た目のインパクトからか、ダイオウイカに次いでたびたびニュースでも取り上げられます。
沖縄がもっともソデイカの水揚げ量が多い県ですが、丸ごと流通することはほとんどなく、ほとんどの場合は加工された状態で身が出回ります。もし生の状態で手に入れることがあれば、身は分厚く固いため、捌いたのちに一度冷凍熟成させて食べましょう。
・別名/アカイカ、ロケット、タルイカ、セーイカなど
・分類/ソデイカ科
・産地/沖縄、兵庫など
・旬/とくに旬はないが沖縄での漁獲時期が11~翌6月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、フライ、煮つけ、バター焼き、一夜干しなど
シリヤケイカ
必殺の分泌液を飛ばすことで有名なイカ
シリヤケイカは北海道を除く全国各地の沿岸部に多く生息するイカで、コウイカに混じってよく水揚げされます。コウイカやモンゴウイカと一見するとフォルムがそっくりですが、シリヤケイカは甲の先端が丸まっている点で区別できます。また胴から赤褐色の分泌液を出すので、釣りあげたときは注意しましょう。
コウイカやモンゴウイカと比べると、味は少し劣ると評価されることもあり、値段も少し安いです。そうはいってもイカ本来の旨味は十分味わえますし、刺身や加熱調理など、どんな料理でも美味しく食べられるおすすめのイカですよ。
・別名/ケツクサレ、ゴマイカなど
・分類/コウイカ科
・産地/北海道以南の沿岸部
・旬/5~11月
・釣期/5~11月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
ホタルイカ
ホタルイカの身投げは富山の風物詩
ホタルイカは深海に生息するイカで、身体中にいくつもの発光器をもつため、真っ暗な海で幻想的に輝いて見えます。春の産卵期になると沿岸部に集まり、なかでも富山湾で水揚げされるホタルイカは全国的に有名です。そんな富山の海岸沿いでは「ホタルイカの身投げ」といって、無数のホタルイカが砂浜に打ち上げられる光景を見ることができます。
多くの場合、水揚げされたホタルイカはすぐにボイルされるため、生の状態で出回ることは珍しいでしょう。辛子酢味噌と和えて食べたり、塩茹でして食べると、ワタの旨味と身の甘さが口のなかであわさって絶品です。また生のホタルイカを食べる場合は、寄生虫がついていることがあるのであまりおすすめはできません。
・別名/小イカ
・分類/ホタルイカモドキ科
・産地/兵庫、富山など
・旬/3~5月
・釣期/3~5月(富山のホタルイカすくい)
・おすすめ料理/塩茹で、和え物、一夜干し、パスタなど
コブシメ
ダイバーに人気の沖縄の可愛いアイドル
温かい海に棲むコブシメは、沖縄ではアオリイカに並ぶ高級なイカとして扱われ、コウイカの仲間のなかでは最大級です。沖縄でのもともとの呼び名である「クブシミ」が名前の由来で、「クブ」が「とても大きい」、「シミ」が「墨」を意味します。
その名の通りコブシメはイカスミが大量に取れるため、沖縄では古くからイカスミ汁が食べられてきました。身も厚いうえに柔らかく、とっても甘味が強いです。加熱しても固くなりにくいため、どんな料理にしても美味しく味わえますよ。
・分類/コウイカ科
・産地/沖縄
・旬/1年中
・釣期/10~3月
・おすすめ料理/刺身、天ぷら、煮つけ、バター焼きなど
ボウズイカ
タコのような見た目をした不思議なイカ
ボウズイカはダンゴイカ科の仲間で、本種以外にも日本ではミミイカが有名です。そのユニークな見た目はどこかタコにも似ていて、ヒレが丸みを帯びていることから宮城では「ミッキーマウス」と呼ばれます。
味もどこかタコに似た旨さがあり、若干水っぽさもありますが食感もよくて美味しいです。刺身も絶品なほか、下処理せずに丸ごと煮つけにしても美味しく食べられます。
・別名/ミッキーマウス、ピンダコ、ミミイカなど
・分類/ダンゴイカ科
・産地/宮城、福島など
・旬/3~5月
・おすすめ料理/刺身、煮つけ、パスタなど
おわりに
アオリイカやヤリイカなど、名前は聞いたことがあっても、それらを見た目で区別ができない人も案外多かったのではないでしょうか。実際にヤリイカやケンサキイカは写真では一目で区別できない場合もあります。
また地域によってはケンサキイカをアカイカと呼ぶこともあるし、単に正式名がアカイカというイカだっています。せっかくイカを購入するなら、ぜひ間違いのないよう慎重に購入してくださいね。この記事が少しでもみなさんの役に立てることを願っています。
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