磯でマツバガイを採ろう!
実はよく知らないだけで、僕らの身近には食べられる食材が多くあります。今回は、それらの中でも比較的入手が簡単な「マツバガイ」について採り方や料理のやり方をまとめてみました。
マツバガイは、比較的綺麗で温かい海なら全国各地どこでもいます。カサのような殻に身を隠し、テトラポットや磯の岸壁にすごい力で引っ付いている可愛い貝です。実際に手に取ってみると、目がにょろにょろと動き、キュートな口がたまりません。
なんとこのマツバガイですが、見た目に反してとんでもなくオイシーのです。味や食感は、まるでアワビやエスカルゴ。ぜひ騙されたと思ってマツバガイを採りに行ってみてください。感動すること間違いなしです。
・マツバガイの特徴や生息場所について知ろう!
・マツバガイの安全な採り方を確認しよう!
・マツバガイの下処理や料理の仕方を知ろう!
マツバガイについて
マツバガイはどんな特徴の貝?
マツバガイは、カサガイ目ヨメガカサ科に分類される巻貝の一種です。貝殻の形がカサのような形をしていて、マツバガイの殻の表面には名前の由来にもなったマツの葉に似た模様が放射状に広がっています。
一般的には、おおよそ殻長5センチほどの固体が多いですが、中には殻長8センチで高さが2センチほどにもなる固体も存在。マツバガイは長寿であり、成長が遅いため大きな固体であれば何十年も生きているということです。
マツバガイと同じカサガイの仲間には、ヨメガカサ、ベッコウガサがありますが、いずれも地域によっては昔から食用とされています。
マツバガイが採れる地域・場所は?
マツバガイは九州や四国を中心に、主に千葉県房総半島よりも南の海に生息しています。綺麗な水質を好むため、潮通しのよいテトラポットや磯の岸壁などで見かけることが多いです。
マツバガイを採る際の注意点や準備は?
漁業権は絶対確認!マツバガイを採ったら密漁に!?
磯で生き物を採って持ち帰る際には、マツバガイに限らず必ず漁業権を確認してください。地域によってはマツバガイにも漁業権がかかっていることがあり、知らずに採ってしまうと密漁になってしまいます。各地域の漁業権について調べるには、海上保安庁が運営している「海しる」を利用しましょう。
さらにマツバガイは主にマイナスドライバーを使って採りますが、道具の使用が禁止になっている地域もあるので注意してください。道具の使用に関しては、「水産庁のホームページ」内に都道府県ごとの一覧表があります。マイナスドライバーは「は具」に分類されるので要チェック。
潮の満ち引きに注意!満潮時の磯は危険
潮位は約6時間おきに満潮と干潮を繰り返します。特に磯でマツバガイを採る場合には、必ず潮見表で満潮時間と干潮時間を確認しなければなりません。
満潮時と干潮時の海面の高さは地域や地形によって違いますが、何メートルも差があるところもあります。マツバガイを採ることに集中していたら、気づけば海に囲まれ動けなくなっていたなんてこともあるので気を付けましょう。干潮の2~3時間前に磯へ行き、遅くても干潮後2時間以内には帰るようにしてください。
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マツバガイ採りに適した服装は?
長袖長ズボン
ケガや日焼け防止のために長袖長ズボンが適切です。磯は足場が悪いことが多く、藻で滑って思わぬ転倒に繋がることがあります。
毒を持った生物や割れたビンなどもよく見かけるので、万が一に備えましょう。半ズボンや水着は避けてください。
マリンシューズ
磯でマツバガイを採る場合には、すべり止めがついた水陸両用のマリンシューズがあると安心。サンダルは脱げる恐れや、露出が多いのでケガに繋がります。
軍手
マツバガイを採る際に、勢いあまって周囲の岩やマツバガイの殻で手を切るリスクがあるので必ず軍手を着用しましょう。
帽子
帽子をかぶっておくことで日焼け防止、さらには熱中症予防に繋がります。
ライフジャケット
万が一に備えてライフジャケットを着用しましょう。特に磯は波にさらわれてしまう危険性が高いです。
マツバガイ採りに必要な道具
マイナスドライバー
テトラポットや岸壁にくっついたマツバガイを剥がすには、マイナスドライバーが必要です。海水に触れるためサビたり、岩場にこすれてボロボロになったりするので、ぜひマツバガイ採り専用のマイナスドライバーを用意してください。
形状はどんなものでもかまいませんが、大きすぎても小さすぎても使いにくいです。全長15~20センチ程度を目安にしましょう。
クーラーボックス
採ったマツバガイを生きたまま持ち帰るために必要です。おすすめは、クーラーボックスの中にタオルを巻いた凍らせたペットボトルを入れるやり方です。冷えすぎたらマツバガイが弱ってしまうので、直接氷に触れさせないようにしましょう。
ビニル袋数枚
クーラーボックスは視界に入る範囲に置いて、採ったマツバガイを手に持ったビニル袋にどんどん入れていくといいです。ある程度貯まったら、ビニル袋ごとクーラーボックスに入れましょう。
ただしマツバガイの殻でビニル袋が破れやすいので、少し多めにビニル袋は持っていくのがいいです。
マツバガイの採り方
干潮の約3時間前に磯へ到着
磯へとやって来ました。下の写真を撮影したのは14時半ごろで、この日は干潮が18時過ぎです。実はちょうど満潮の正午ごろに磯へと到着したのですが、そのタイミングでは写真で見えている磯は全て海の中でした。そこで一旦近所の施設で潮が引くのを待ちました。
このように満潮や干潮の時間帯を確認せずに磯へ遊びに行くことは危険です。磯遊びできないどころか下手すれば命に関わります。必ず潮見表を確認してから現地入りしましょう。
磯におけるマツバガイの生息スポット
マツバガイは岩の割れ目やくぼみ、岸壁に張りついています。さらにマツバガイは、満潮時は海に沈み、干潮時に露出する場所を好むため、陸に近い場所よりも、波打ち際に近い場所のほうが生息している可能性が高いのです。


乱獲厳禁!大きい個体を探そう
できれば縦4~5センチ以上の固体を狙います。マツバガイは成長が遅い貝なので、小さい個体は乱獲せずにじっくり大きく育ってもらいましょう。
大きい個体は波打ち際ギリギリの場所や岩の割れ目の奥の方など、誰もが見逃しやすい場所にひっそりといます。ただし危険を伴う場所にいた場合は、潔く諦めてください。

マイナスドライバーを使ってマツバガイを採ろう
マツバガイを採るためのマイナスドライバーです。先述した通り、地域によっては道具の使用が禁止されている場合があるので注意してください。
それではマツバガイの採り方をご紹介します。まずはマイナスドライバーの先端を一番すんなりと挿入できそうな場所を探します。そしてその場所へ、躊躇せず思いっきりマイナスドライバーを挿入。1センチほど挿入できれば十分で、あとは「てこの原理」を使ってポンと外します。
ひとつ注意点があって、マイナスドライバーを挿し込むのに殻周辺で戸惑っていると、マツバガイが怒って隙間を完全に塞いでしまいます。そうなると、どんな怪力でマツバガイを剥ぎ取ろうにもピクリとも動かなくなってしまいます。必ず一撃で仕留めましょう。


殻の表面に付着する海藻や別の生き物
大きなマツバガイの殻の表面には、海藻やフジツボ(貝に似た甲殻類)が生えていることがあります。しかし、殻は食べないので気にせず採ってもらえれば大丈夫です。
また、マツバガイの特徴的な殻の模様は成長とともに色あせていくことが多いです。「マツバガイじゃない」と思って、大きなマツバガイを見逃すことがないようにしましょう。

マツバガイの下処理
マツバガイを大量の水で洗う
持ち帰ったマツバガイを大量の水でガシャガシャ洗います。殻と殻をぶつけて汚れを落とすイメージです。この際も手を切るリスクがあるので、できれば軍手をしてください。
写真のようにボウルとザルを使い、たっぷりの水を張った中で作業するといいです。水が恐ろしく濁ると思いますので、3~4回ほど繰り返しましょう。ここでは、おおまかな汚れだけを落とすイメージで大丈夫です。
ブラシを使って細かい汚れを落とす
少々面倒かもしれませんが、流水にあてながらブラシで殻の表面と内側の可食部を擦ってあげます。よく見ると細かい砂が付着していることが多いです。
湯通しして身を殻から外す
大量の湯に沸かし、マツバガイを20秒ほどくぐらせます(塩もひとつかみほど入れています)。これは、完全に火を入れることが目的ではなく、身を殻から外すことが目的です。
少量であればこの工程を省き、一つずつスプーンで身をくり抜くように外すだけでかまいません。刺身で食べたい場合も湯通しは避けましょう。
すぐにザルにあげ、流水で粗熱を取ります。余熱で火が入らないようにしましょう。
内臓を取り除く:ただし白子や真子は珍味
内臓は美味しくないので指で取り除きます。写真の丸くて黒い膜に覆われた部分がそうです。
ただし、白子と真子はビックリするぐらいオイシーです。特に夏の時期は産卵に備えて白子が大きく発達しています。潰さないように優しく取りましょう。また黒い膜の中には少し黒味がかった真子や発達していない白子もありますので、ぜひそちらも食べてみてください。


唾液腺と口を取り除く
指差している部分が唾液腺と口です。あまり食感がいいものではなく、貝の種類によっては毒がある部位になります。手で引っ張れば簡単に除去できるので、少々面倒かもしれませんが出来る限り除去しましょう。
身と白子、真子に分けました。ここまで来ればあとは簡単。美味しく料理していきましょう。
マツバガイ料理
マツバガイのうま煮
<材料>2人分
マツバガイ・・・・・適量
(A)水・・・・・・・・・180ml
(A)薄口醤油・・・・・・大さじ2
(A)みりん・・・・・・・大さじ2
(A)酒・・・・・・・・・大さじ1
(A)砂糖・・・・・・・・大さじ1
作り方
1,(A)を鍋に合わせマツバガイを入れ、中火で火にかける。
2,沸いたら弱火にし、5分煮る。
3,(2)を鍋ごと冷水で冷やし、一晩味を含ませる。
注意、コツなど
マツバガイに限らず貝は加熱し過ぎると身が縮んで固くなります。また、うま煮が完成後も再加熱せずに冷たいまま食べましょう。
マツバガイステーキ
<材料>2人分
マツバガイ・・・・・適量
(A)濃口醤油・・・・・・大さじ1
(A)みりん・・・・・・・大さじ1/2
(A)酒・・・・・・・・・大さじ1/2
作り方
1,下処理したマツバガイを殻に戻し、網の上に並べる。
2,(A)を身の上にかけ、魚焼きグリルで焼く。
注意、コツなど
焼き過ぎると固くなるので気を付けてください。
マツバガイの真子・白子の煮つけ
<材料>2人分
マツバガイの白子、真子・・・・適量
(A)水・・・・・・・・・100ml
(A)酒・・・・・・・・・100ml
(A)濃口醤油・・・・・・30ml
(A)みりん・・・・・・・20ml
(A)砂糖・・・・・・・・20g
(A)生姜・・・・・・・・1かけ(スライス)
作り方
1,(A)を鍋に合わせて沸かす。
2,マツバガイの白子と真子を入れ、中火で15分煮る。アクを都度取り除く。
注意、コツなど
一晩置くとさらに味が染みてオイシーです。
マツバガイのバター醤油焼き
<材料>2人分
マツバガイ・・・・・適量
オリーブオイル・・・大さじ1
にんにく・・・・・・1かけ(みじん切り)
酒・・・・・・・・・大さじ1強
バター・・・・・・・30g
濃口醤油・・・・・・大さじ1
塩胡椒・・・・・・・適量
B.P・・・・・・・・お好みで
作り方
1,オリーブオイルを引いたフライパンににんにくを入れ弱火にかける。
2,にんにくの香りが立ってきたらマツバガイを入れて炒める。
3,酒とバターを入れて全体にからめる。
4,濃口醤油を入れ、塩胡椒とブラックペッパーで味を整える。
注意
焼き過ぎると固くなるので気を付けてください。




安全・安心に徹底してマツバガイを採取、料理しよう
いかがだったでしょうか?
思わずマツバガイを採りに行きたくなったことだと思います。マツバガイは本当に美味で、アワビやエスカルゴといった高級食材に劣りません。
自然界の生き物を採って食べることは、きっと人生においてかけがえのない経験になります。この記事を参考に、ぜひ次の休日はマツバガイ採りにでかけてみてください。
お手数ですが、
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